DX会社とは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を、戦略立案からシステム実装、現場定着まで横断的に支援する専門会社です。コンサル系・SIer系・業務改革系などタイプが分かれ、自社のフェーズと課題によって最適なパートナーは大きく変わります。選定を誤ると数千万〜数億円規模の投資が成果に結びつかないリスクもあるため、評価軸を整理した上での比較が欠かせません。
本記事ではDX会社の選び方の基本軸、主要15社の比較、業界別の活用シーン、依頼時のポイントまでを体系的に解説します。
DX会社とは|役割と支援できる範囲
DX会社の役割は単なるシステム開発の外注先ではなく、業務改革と技術実装を統合的に支援するパートナーです。まずは定義と支援範囲、外部依頼の意義を整理します。
DX会社の定義とSIer・ITコンサルとの違い
DX会社は、業務改革と技術実装を統合的に支援する位置づけにあります。従来のSIerが「決まった要件をシステム化する」役割、ITコンサルが「IT戦略を策定する」役割を担ってきたのに対し、DX会社は両者の中間領域を埋め、戦略立案から運用定着まで横断的に関与する点に特徴があります。
業務プロセスの再設計とテクノロジー実装を切り離さずに進めることで、構想と現場のずれを抑え、投資対効果を高めやすくなります。SIerが要件定義書ありきで動く一方、DX会社は要件そのものを業務側と共に組み立てます。ITコンサルが提案書で完結することがあるのに対し、DX会社は実装後の運用支援まで踏み込むケースが多くあります。境界線は重なっており、近年は大手SIer・コンサルともにDX会社としての機能を強化しているのが実態です。
提供される支援範囲(戦略立案・実装・定着化)
DX会社の支援範囲は、大きく戦略立案フェーズ・実装フェーズ・定着化フェーズの3つに整理できます。
戦略立案フェーズでは、経営課題の整理、業務の現状分析、デジタル化の優先順位づけ、投資ロードマップの作成などを実施します。経営層と現場へのインタビュー、業務フロー分析、ベンチマーク調査などを組み合わせ、構想を文書化します。
実装フェーズでは、システムやデータ基盤の設計・構築、外部パッケージの選定支援、PoC(概念実証)運営、開発ベンダーマネジメントを担います。SaaS導入・基幹システム刷新・データレイク構築など、扱う対象は多岐にわたります。
定着化フェーズでは、現場ユーザーへの教育、運用ルールの整備、KPIモニタリングの仕組み構築、社内DX推進人材の育成までを支援します。実装したシステムが現場に定着しないという問題を防ぐため、定着化までを契約スコープに含むかを事前に確認しておきたいポイントです。
外部依頼するメリットと自社推進との比較
外部依頼の最大のメリットは、社内に不足する専門人材と経験知を即座に活用できる点です。戦略コンサルや大手SIerには、業界横断の実績と方法論が蓄積されています。
意思決定スピードも向上しやすくなります。経営層・現場・IT部門の調整を中立的な第三者が支援することで、社内の力学に左右されにくく、合意形成が進みやすくなります。
一方、留意点としては費用負担と知見蓄積のバランスが挙げられます。外部依存度が高すぎると、プロジェクト終了後に自社で運営できない状況に陥ります。外部パートナーと並行して、社内のDX推進人材を計画的に育てる視点が欠かせません。
DX会社が必要とされる背景
なぜいま外部のDX会社が必要とされるのか、市場環境と経営層の期待から整理します。
国内DX市場の現状と推進企業が抱える課題
経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」では、レガシーシステムの存続が日本企業の競争力低下を招くという「2025年の崖」問題が指摘されました。その後も国内企業の多くが抜本的なシステム刷新と業務改革を迫られ、DX推進は経営アジェンダのひとつとなっています。
ただし、進捗には大きなばらつきがあります。情報処理推進機構(IPA)のDX関連調査でも、戦略策定段階に留まる企業や、PoC段階で頓挫する企業が一定数存在することが報告されてきました。
主な課題は3つに整理できます。1つ目はレガシーシステムの複雑化です。長年の改修で属人化したシステムは、刷新コストとリスクが大きくなっています。2つ目はデジタル人材の不足です。経営に近い立場で構想を描ける人材は社外リソースに頼らざるを得ない局面も多くあります。3つ目は経営層と現場のギャップです。現場が日々の業務改善を進めているなか、経営層が描く全社DX構想とのつながりが見えにくく、投資判断が止まることが少なくありません。
参照:経済産業省「DXレポート」
経営層がDX会社に期待する役割
経営層がDX会社に期待する役割は、単なる開発リソースの補完ではありません。
第一に、戦略の言語化と全社合意形成です。経営層の問題意識を、各事業部・現場が動ける形に翻訳することが求められます。第三者の視点で課題を整理することで、社内の意見対立を超えた合意形成がしやすくなります。
第二に、業務プロセスの再設計です。既存の業務をそのままデジタル化しても効果は限定的で、業務そのものを問い直す論点提示が不可欠です。
第三に、ROIの可視化と投資判断の支援です。経営会議に上げる投資判断は、定性的な期待効果ではなく定量的なシミュレーションを伴う必要があります。DX会社は業界ベンチマークやROIモデルを持ち込むことで、経営層の意思決定を後押しします。
DX会社の主要タイプと選び方の基本軸
DX会社は強みの軸でタイプが分かれます。自社のフェーズと予算を踏まえた選定基準を整理します。
戦略系・実装系・業務改革系の3タイプ
DX会社は、強みの軸でおおむね3タイプに分類できます。
| タイプ | 主な役割 | 強み | 適合プロジェクト |
|---|---|---|---|
| コンサル系 | 戦略立案・全社設計 | 経営課題整理、業界ベンチマーク | DX構想策定、投資判断支援 |
| SIer系 | システム実装・運用 | 大規模開発の遂行力、既存資産刷新 | 基幹システム刷新、データ基盤構築 |
| 業務改革系 | プロセス再設計 | 現場業務の深い理解、ERP・SCM領域 | 業務改革、グローバル業務標準化 |
コンサル系は、Big4系(デロイト・PwC・EY・KPMG)やアクセンチュアなどが該当し、経営課題の整理から投資ロードマップ策定までを得意とします。実装は別ベンダーに委託する分業モデルもありますが、近年は実装機能を強化し垣根が薄れています。
SIer系は、NTTデータ・富士通・日本IBM・BIPROGYなどの大手SIerが代表的で、大規模システム開発の遂行力と既存資産との接続知見が強みです。
業務改革系は、アビーム・クニエなど業務領域に深く入り込むコンサルが該当し、ERP導入や業務標準化と組み合わせたDXを得意とします。
自社のDXフェーズ別に見る選定基準
DX会社を選ぶ際は、自社のDXフェーズによって重視すべき軸が変わります。
構想策定フェーズでは、業界知見と経営課題整理のスキルが重要です。経営層との議論をリードできるシニア人材の関与度合いを、契約前に確認しておくと安心です。
PoC・実装フェーズでは、技術選定の妥当性とプロジェクトマネジメント力が問われます。特にPoCを「実証で終わらせず本番展開につなげる」工夫を持つ会社かどうかは、選定の分かれ目になります。過去の本番展開比率や、実装後の運用設計まで提案に含める姿勢を確認します。
全社展開フェーズでは、複数事業部・複数システムを横断するプログラムマネジメント力と、現場定着のためのチェンジマネジメント能力が重要です。組織開発・人材育成までスコープに含められる会社が望ましい局面となります。
費用相場と契約形態の見極め方
費用相場はプロジェクトの規模と関与人数で大きく変動します。
戦略立案フェーズ単体では、月額数百万円〜数千万円規模が一般的です。シニアコンサルの稼働日数で単価が変わり、Big4系・アクセンチュア系では月額1,000万円以上のチーム編成も珍しくありません。
実装フェーズではエンジニアの人月単価が積み上がるため、年間数千万円〜数十億円規模になる案件もあります。
契約形態は主に準委任・請負・成果報酬の3種類です。準委任は工数ベースで柔軟、請負は成果物の完成責任を負う形で見積総額が固定、成果報酬はKPI達成度に応じた変動報酬です。DX案件は要件が動く前提のため、フェーズごとに準委任と請負を使い分けるのが現実的な進め方となります。
見積比較では、人月単価だけでなく、想定稼働率、シニアと若手の比率、サブコン活用の有無、想定成果物のレベル感まで揃えて確認すると差が見えやすくなります。
DX会社おすすめ15選|主要企業の比較
ここからは、業界で広く認知されているDX関連支援会社15社を紹介します。各社の強みと適合する顧客像をフラットに整理しました。
① アクセンチュア株式会社
グローバルDXコンサルの最大手として、戦略立案からシステム実装、運用支援までの広範な支援領域を持ちます。経営戦略コンサルとしての歴史に加え、テクノロジー実装組織を世界規模で抱えており、構想と実装の分断を起こしにくい点が特徴です。大企業の全社DXプロジェクトや、業界横断のプラットフォーム事業創出など、規模が大きく難易度の高い案件に向いています。シニア人材の層が厚く、グローバル展開を伴う案件との親和性も高く評価されています。
② 株式会社NTTデータ
国内最大級のITサービス企業で、金融・公共領域のミッションクリティカル領域に長年の実績があります。勘定系・税務・社会インフラなど止められないシステムの構築運用ノウハウが強みで、大規模システム刷新を伴うDX案件において信頼性の高さが選定の決め手になりやすい会社です。グループ会社を含めた幅広いケイパビリティを動員でき、業務コンサルから保守運用まで含めた包括的な支援体制を組み立てやすい構造を持ちます。
③ 株式会社モンスター・ラボ
デジタルプロダクト開発に強みを持ち、新規事業・サービス開発型のDX案件への適合性が高い会社です。アジャイル開発と海外開発拠点を組み合わせたグローバル開発体制を持ち、UX・UI設計とエンジニアリングを統合した支援を提供します。既存業務のIT化よりも、デジタル起点の新規事業立ち上げや顧客向けアプリ開発を志向する企業に適合します。スタートアップから大企業の新規事業部門まで幅広い支援実績があります。
④ 株式会社日立コンサルティング
日立グループのコンサル部門として、製造業・社会インフラ領域に厚い実績を持ちます。現場のオペレーションプロセスとIT実装の橋渡しが得意で、設計・生産・保守といった製造業特有の業務プロセスを踏まえたDX設計ができる点が特徴です。大手製造業の工場DXやサプライチェーン改革など、現場領域とIT領域をまたぐ案件と相性が良い会社です。グループのテクノロジー基盤を活用した実装連携も期待できます。
⑤ 株式会社電通デジタル
マーケティングDX・顧客接点改革に強みを持ち、データ活用とCX設計を統合的に支援できる会社です。電通グループのマーケティング知見とデジタル実装力を組み合わせ、CRM・MA・データ分析基盤の構築から運用までをカバーします。BtoC企業のDXや、顧客データ統合と店舗・EC連携を進めたい流通系企業との相性が良いことで知られています。広告投資との接続も含めた事業効果視点での提案が特徴です。
⑥ デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
Big4系の戦略・業務改革コンサルとして、規制業界やグローバル展開支援に強みを持ちます。会計・監査グループを背景にした内部統制・リスク管理の知見と、戦略立案・業務改革のスキルを組み合わせた支援が可能です。経営層直轄の重要プロジェクトや、海外子会社を含むグローバルDXとの親和性が高く、大企業の全社プログラムマネジメントに採用されることが多い会社です。
⑦ 株式会社野村総合研究所
シンクタンクとSI機能を併せ持つ独自のポジションを持ちます。金融・流通領域での実績が豊富で、業界調査と業務知見をベースにした戦略提案から、基幹システム刷新までを連続的に対応できる体制を有します。「戦略立案と基幹システム刷新を同じパートナーで進めたい」という企業のニーズと相性が良く、業界調査レポートの発信力も含めて選定理由になることがあります。
⑧ PwCコンサルティング合同会社
Big4系のグローバルコンサルファームで、リスク・コンプライアンスを伴うDXに強みを持ちます。業務監査の知見を活かした業務改革提案が特徴で、内部統制の見直しを含むDX案件に適合します。規制対応が経営課題と直結する金融・製薬・公共などの業界で実績が豊富で、グローバルネットワークを活用した海外展開支援も可能です。リスクと業務効率の両立を求める案件で選ばれやすい会社です。
⑨ EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社
Big4系の中で経営戦略起点のDX支援に強みを持つ会社です。M&Aアドバイザリーとの連携が強く、買収後の業務統合(PMI)やグループ再編に伴うDXとの親和性が高い点が特徴です。サステナビリティ統合型のDXや、ESG情報基盤の構築にも対応できる体制を持ち、財務・非財務情報を統合した経営管理基盤の構築案件などに採用される傾向があります。
⑩ KPMGコンサルティング株式会社
Big4系で、内部統制・データガバナンス領域に強みを持ちます。監査法人系の知見を活かしたコンプライアンス対応と、データ活用基盤の構築を組み合わせた支援が特徴です。規制業界のDXや、リスク管理の高度化を伴うデータ基盤プロジェクトで実績があります。実装フェーズでもリスク管理を組み込んだ進め方を提案できる点で、金融・医療・公共セクターと相性の良い会社です。
⑪ アビームコンサルティング株式会社
日系総合コンサルとして、業務改革領域に強みを持つ会社です。ERP導入とグローバル業務標準化のプロジェクト実績が豊富で、SAPなどのパッケージ導入を起点とした業務改革を得意とします。中堅〜大手製造業のDX、特にグローバル拠点を抱える日系企業の業務統合と相性が良く、現場業務に深く入り込むスタイルが特徴です。日本企業特有の業務慣行を踏まえた進め方を提示できる点も評価されています。
⑫ 株式会社クニエ
NTTデータグループの業務系コンサルとして、SCM・調達領域の業務改革に強みを持ちます。製造業・流通業の現場業務に踏み込んだ改革提案が得意で、現場主導のプロセス改革と組み合わせたDX案件に適合します。生産計画・需要予測・調達最適化など、業務知見が成果を左右するテーマでの実績が豊富で、現場と経営をつなぐコンサルとしてのポジションを確立しています。
⑬ 日本IBM株式会社
AI・クラウド基盤と統合したDX支援が特徴で、ハイブリッドクラウド領域で豊富な実績を持ちます。WatsonをはじめとするAI技術と、Red Hatを中核としたハイブリッドクラウド基盤を組み合わせ、データドリブン経営への移行案件で強みを発揮します。グローバル知見と業界別ソリューションの蓄積があり、製造業・金融業の大規模DXで採用される会社です。コンサルティング部門と実装部門の連携体制が整っている点も評価されます。
⑭ 富士通株式会社
国内SIerの大手として、公共・製造業に厚い基盤を持ちます。オンプレミス資産の刷新型DXへの対応力が強く、長年運用してきた基幹システムの段階的なクラウド移行や、業界別ソリューションを組み合わせた業務改革を提案できます。Uvanceなどの業界横断ソリューション群を保有し、業務領域に応じた標準化されたアプローチを提供できる点が特徴です。大規模・長期のシステム刷新プロジェクトに向いています。
⑮ BIPROGY株式会社
旧日本ユニシスのSIerで、金融・流通の基幹システム刷新で実績を積んできた会社です。データ活用基盤の構築を含むDXに適合し、ビジネスエコシステム創出を掲げた事業会社連携型のDX案件にも取り組んでいます。基幹システム刷新と新規デジタル事業創出を組み合わせたい企業や、業界横断のプラットフォーム構築を志向する企業との相性が良い会社です。
業界別に見るDX会社の活用シーン
業界によってDX案件の論点と外部パートナーの活用パターンは大きく異なります。代表的な3業界の活用シーンを整理しました。
製造業における活用シーン
製造業では、スマートファクトリー化・サプライチェーン改革・設計プロセスのデジタル化が代表的なテーマです。
スマートファクトリー化では、IoTセンサーとMES(製造実行システム)を組み合わせた稼働データ収集、AI画像検査、予防保全モデルの導入などが進んでいます。生産現場の暗黙知を見える化し、属人的なノウハウをデジタルに転写することが核心です。ハードウェアベンダーと現場プロセスの両方を理解する会社、たとえば日立コンサルティング・富士通・IBMなどが選ばれやすいテーマです。
サプライチェーン領域では、需要予測・在庫最適化・調達一元化など、データ統合を伴うプロジェクトが増えています。海外拠点を含むSCM改革ではアビーム・クニエなどが採用されることが多く、グローバル業務標準化が論点になります。
設計プロセスのデジタル化(PLM導入、CAD・CAEの統合)では、業界特化のソリューションを保有する大手SIerが候補に上がります。
金融・保険業における活用シーン
金融・保険業では、勘定系のモダナイゼーション、顧客接点のデジタル化、リスク管理基盤の整備が主要テーマです。
勘定系モダナイゼーションは、長年運用してきたメインフレームをクラウドや分散基盤へ段階的に移行するプロジェクトです。NTTデータ・野村総合研究所・BIPROGYなど、金融基幹システムに長年取り組んできた会社が中心的なパートナーになります。段階移行とリスク管理を両立させる方法論を持つ会社かどうかが、選定の最重要ポイントです。
顧客接点のデジタル化では、口座開設・契約手続き・問い合わせ対応の非対面化が進んでいます。CXデザインとAIチャットボットを組み合わせる案件では、電通デジタルやコンサル系の関与が増えています。
リスク管理・規制対応の領域では、KPMG・PwC・デロイトなど監査系の知見を持つコンサルが、データ基盤の整備とガバナンス設計を組み合わせて支援します。
小売・流通業における活用シーン
小売・流通業では、OMO(オンラインとオフラインの統合)、需要予測、CRM強化が主要テーマです。
OMOは、店舗・ECサイト・アプリの会員IDを統合し、購買データと行動データを横断活用する取り組みです。電通デジタルやアクセンチュアなど、CRM・データ統合の知見を持つ会社が支援対象になります。
在庫・需要予測では、AIモデルによる店舗別需要予測、自動発注、季節変動対応が代表的な論点です。店舗オペレーションを変えずにシステムだけ導入しても効果は出にくく、業務改革とセットで進める発想が欠かせません。
顧客データ統合とCRM強化では、データレイクやCDP(カスタマーデータプラットフォーム)の構築から、施策運用までをセットで進める案件が増えています。SIer・コンサル・マーケティング会社の連携体制が成果を左右します。
DX会社への依頼で失敗しないためのポイント
DX案件は依頼前後でつまずきやすい論点が多く、事前準備の質が投資効果を左右します。
RFP作成と要件定義の事前準備
DX会社への依頼で最初に重要なのが、RFP(提案依頼書)の作成です。RFPの質が、提案内容と最終成果の質を大きく左右します。
事前準備は3点に整理できます。第一に、目的・スコープの言語化です。「DXを進めたい」だけではなく、「どの業務領域で・誰の課題を・どの程度解決したいのか」をできるだけ具体的に書き出すことが、提案の精度を高めます。
第二に、現状業務の整理と課題仮説です。完璧な分析は不要ですが、現行プロセス・既存システム・関係者の論点をある程度文書化しておくと、提案者間の前提が揃い比較しやすくなります。
第三に、評価基準の明確化です。提案を漠然と良し悪しで見ず、業界実績・体制・方法論・費用・スケジュールなどの評価項目と重みづけを事前に決めておくと、社内合意形成にも有効に働きます。
社内体制とプロジェクトオーナーの設定
DX会社は外部パートナーであり、社内体制の弱さを補えるわけではありません。
経営層のコミットメント獲得は、プロジェクトの成否を左右する起点です。経営課題から逆算した投資判断と、定期的な進捗レビューに経営層が関与する体制があるかどうかで、論点の決着スピードが大きく変わります。
現場キーパーソンの巻き込みも欠かせません。業務改革を伴うDXは、現場の業務変更を必然的に伴います。現場の理解と協力を得るために、影響範囲の大きい部署から代表者をプロジェクトに巻き込み、設計段階から議論に参加してもらう設計が効果的です。
外部パートナーへの権限委譲の範囲も明確にします。意思決定をどこまで委ねるか、どこから自社で判断するかを契約前に整理しておくことで、現場での停滞や過度な依存を避けられます。
短期成果と中長期ロードマップの両立
DXは中長期の取り組みですが、3〜6か月単位での成果が見えないと社内の支持を得にくくなります。
クイックウィン領域の設定が最初のステップです。比較的シンプルで効果が見えやすい業務領域(経費精算、特定部門の帳票自動化、特定業務のRPA化など)から着手し、短期間で目に見える効果を出すことで、全社的な機運を作りやすくなります。
ただし、クイックウィンに集中しすぎると、全社最適から外れた局所改善が積み上がるリスクもあります。全社ロードマップの中にクイックウィンを位置づけ、短期成果と長期投資の両立を図る視点が欠かせません。
成果指標も段階的に設計します。初期は業務効率化指標(処理時間・件数)、中期は顧客指標(NPS・継続率)、長期は事業指標(売上・利益・新規事業比率)といった形で、フェーズに応じた評価軸を持つことで、関係者の納得感が高まります。
DX会社に依頼する流れと進め方
問い合わせから契約締結、プロジェクト運営までの一連の進め方を整理します。
問い合わせから契約までのステップ
DX会社への依頼は、問い合わせから契約締結までおおむね2〜4か月かかります。
最初のステップは事前ヒアリングと提案依頼です。複数社に対して問い合わせを行い、初回ヒアリングで課題感とプロジェクトの背景を共有します。この段階で各社のシニア人材が関与してくれるか、業界知見が感じられるかを確認することが、後の提案品質を予測する手がかりになります。
次に、比較検討と社内承認のステップに移ります。提案書・見積書を受領した後、評価基準に基づいて社内で評価し、第1次選定・第2次選定(プレゼン)を経て候補を絞り込みます。役員会レベルの承認が必要な金額の場合、社内決裁プロセスとスケジュールを早期に逆算しておくことが重要です。
最後に、契約・SOW(業務範囲記述書)の確定です。スコープ・成果物・体制・期間・費用・検収条件・知的財産権の取り扱いなどを文書化し、双方の合意を取ります。
契約後のプロジェクト運営の進め方
契約締結後は、プロジェクト運営の質が成果を決めます。
キックオフでは、プロジェクトの目的・成果指標・体制・役割分担・コミュニケーションルールを改めて全関係者で合意します。経営層・現場・外部パートナーの三者でゴールを揃えることが、後の論点整理を円滑にします。
定例ガバナンスは、週次の作業ミーティングと月次のステアリングコミッティを併用するのが一般的です。週次ではタスクと論点、月次では戦略的な意思決定とスケジュールを扱います。ステアリングコミッティに経営層が継続して出席する設計を組めるかが、プロジェクトの遂行スピードを左右します。
成果物検収と次フェーズへの移行も重要な節目です。検収基準を事前に文書化し、品質保証の責任所在を明確にすることで、フェーズ間の引き継ぎがスムーズに進みます。次フェーズに同じパートナーを継続採用するか、別の会社に切り替えるかの判断もここで行います。
まとめ|自社に合うDX会社を選ぶために
最後に、選定時のチェックポイントと次に取るべきアクションを整理します。
検討時のチェックポイント整理
DX会社の選定では、自社のフェーズ・課題・予算の3点をあらためて確認することが起点です。
構想策定段階か、実装段階か、全社展開段階かによって、選ぶべき会社のタイプは変わります。予算と契約形態(準委任・請負・成果報酬)の妥当性を見極め、見積項目の前提を揃えて比較することも欠かせません。
候補社の絞り込み軸は、業界実績・体制・シニア人材の関与度・方法論・費用の5項目で整理すると、社内で議論しやすくなります。
次に取るべきアクション
選定の入口として、まずRFPドラフトの作成に着手することが現実的です。目的・スコープ・現状課題・評価基準を文書化し、社内で粒度を揃えます。
その上で、3〜5社程度に提案依頼を送り、比較検討に進みます。提案内容だけでなく、提案プロセスでの議論の深さや論点提示の質を観察することで、実務における協業の進めやすさが見えてきます。
並行して、社内意思決定プロセスの整備も進めます。承認権限・予算枠・決裁スケジュールを早期に確認し、選定後の契約締結が滞らない準備を整えておきます。
本記事の要点を整理します。
- DX会社とは、企業のDX推進を戦略立案・システム実装・現場定着の各フェーズで横断的に支援する専門会社で、コンサル系・SIer系・業務改革系の3タイプに大別されます
- 主要15社(アクセンチュア、NTTデータ、モンスター・ラボ、日立コンサルティング、電通デジタル、デロイト、野村総合研究所、PwC、EY、KPMG、アビーム、クニエ、IBM、富士通、BIPROGY)はそれぞれ強み領域が異なり、自社のフェーズと課題に合わせた選定が成果を左右します
- 業界別の活用シーンは、製造業(スマートファクトリー・SCM)、金融・保険業(勘定系刷新・リスク管理)、小売・流通業(OMO・需要予測)など特徴がはっきり分かれており、業界知見の有無が候補選定の重要な軸になります
- 失敗しない依頼のためには、RFPの精度、社内体制とプロジェクトオーナーの明確化、短期成果と中長期ロードマップの両立が欠かせません
- 次の一歩は、RFPドラフトの作成、3〜5社への提案依頼、社内意思決定プロセスの整備の3つを並行で進めることです