大手コンサルティング会社とは
大手コンサルティング会社とは、グローバルで数千名〜数十万名規模の人員を擁し、戦略立案から実行支援までを広く手掛けるファームの総称です。経営戦略やDX推進の局面で起用を検討する企業が増えており、各カテゴリの特徴を理解したうえでの選定が、投資対効果を左右する起点となります。
大手と中堅・ブティック系の違いは何か
違いは、人員規模・対応領域・単価の3点に集約されます。大手ファームの多くは国内だけで数千人〜2万人規模のコンサルタントを擁し、グローバルでも数十カ国に拠点を持ちます。一方、ブティック系は数十〜数百名で特定領域に特化する形が一般的です。
対応領域も差が大きく、大手は経営戦略から業務改革、システム実装、運用支援まで幅広くカバーします。ブティック系は戦略策定や業界特化リサーチなど一部工程に集中する代わりに、深い専門性と機動力を備えています。プロジェクト単価もこれに比例し、大手の戦略系で月額数千万円〜億単位、中堅では数百万〜千万円台が目安です。選定の起点は、解きたい課題の幅と深さの設計にあります。
大手ファームが選ばれる理由は何か
大手ファームが選ばれる理由は、支援実績の蓄積、人材動員力、経営層への訴求力の3点にあります。グローバル展開する大手は、同業他社や類似テーマでの蓄積を踏まえた方法論を備え、論点の抜け漏れや手戻りを抑えながら検討を進めやすい体制を持ちます。
戦略立案からシステム導入、業務オペレーション設計まで多様な専門人材を一つの案件にアサインできる点も特徴です。人事、財務、法務、データサイエンスといった領域を必要に応じて束ねられます。さらに、取締役会や経営会議向けの報告で求められる説明品質を提供しやすく、経営層を巻き込んだ意思決定プロセスを設計する局面で価値を発揮します。複雑な全社課題ほど、大手の優位性が顕在化する構造です。
国内コンサル市場の規模と動向
国内コンサル市場は、二桁成長を継続する数少ないプロフェッショナルサービス市場です。IDC Japanの調査では、2024年の国内ビジネスコンサルティング市場は前年比10.8%増の7,987億円に達し、2025年も11.2%増の見込みと公表されています(参照:IDC Japan「国内ビジネスコンサルティング市場予測、2024年〜2029年」)。
成長を牽引するのはDX関連需要で、組織改革、業務改革、AI活用支援が伸びています。同調査では2024〜2029年の年平均成長率を9.9%と見込み、2029年に1兆2,832億円規模に達すると予測しています。総合系・IT系の伸びが大きい一方、戦略系は限定的な人員のなかで高単価案件が中心となっており、ファームのカテゴリごとに成長の質が異なる点に留意したいところです。
大手コンサルティング会社の主な分類
大手コンサルティング会社は、出自と提供価値の重心の違いから、戦略系、総合系、IT・デジタル系、日系・独立系の4カテゴリに大きく分かれます。次の表で全体像を整理します。
| カテゴリ | 主な強み | プロジェクトの中心 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| 戦略系 | 経営層直下の論点設計 | 全社戦略、新規事業 | マッキンゼー、BCG、ベイン |
| 総合系(BIG4系含む) | 戦略から実装までの広域対応 | 業務改革、組織再設計 | デロイト、PwC、EY、KPMG、アクセンチュア |
| IT・デジタル系 | テクノロジー実装力 | 基幹刷新、DX | アクセンチュア、ITベンダー系 |
| 日系・独立系 | 国内業界知見、リサーチ機能 | 業界戦略、政策連動領域 | NRI、三菱総研、アビーム |
戦略系コンサルティングファーム
戦略系は、経営トップ直下のテーマを少数精鋭で扱うファーム群です。全社戦略、ポートフォリオ再構築、新規事業の方向付け、M&A戦略といった経営アジェンダを中心に、論点設計と分析を高密度で進めます。
人員規模は他カテゴリに比べて限定的で、月額単価は最も高い水準です。一方で関与期間は数カ月単位の短期集中型が多く、提言書の質と意思決定への影響力で価値を出します。代表的なのはマッキンゼー、BCG、ベインのいわゆるMBBで、ここに続く存在としてA.T.カーニー、ADL、ローランド・ベルガーなどが挙げられます。
総合系(BIG4系)コンサルティングファーム
総合系は、戦略から実行、運用まで広い対応領域を持つカテゴリです。BIG4系とは監査法人を母体とする4ネットワーク──デロイト、PwC、EY、KPMG──のコンサルティング部門を指します。監査・税務・財務アドバイザリーと連携できる点が、戦略系にはない強みです。
業界別チームの厚みも特徴で、製造、金融、ヘルスケア、公共など業界ごとに専門ユニットが置かれています。複数年度にわたるプログラム型の支援、規制対応、リスク管理など、組織横断で長期に走る案件で力を発揮します。
IT・デジタル系コンサルティングファーム
IT・デジタル系は、システム導入とDXを主軸にするファーム群です。基幹システム刷新、データ基盤構築、SaaS導入、AI実装などを連続して支援できる体制を備えています。
代表的なアクセンチュアは、戦略策定からシステム実装、運用までを単一ファーム内で接続できる規模感が特徴です。2025年時点の国内人員規模は約2万8,000人に達し、コンサル業界で最大級の体制を構築しています(参照:ダイヤモンド・オンライン「コンサル30社」国内人員数調査)。アビームのIT部門、IBMコンサルティングなども同カテゴリに含まれます。
日系・独立系コンサルティングファーム
日系・独立系は、シンクタンク機能や国内市場知見を強みとするファーム群です。野村総合研究所、三菱総合研究所、日本総合研究所などはシンクタンクとコンサルティング機能を併せ持ち、政策・公共領域から金融、製造業まで幅広く対応します。
外資系大手と比較して国内業界の慣行や規制動向に対する理解が深く、長期にわたるパートナーシップ型の関係を築きやすい点が特徴です。海外プロジェクトには限定的な対応となるものの、国内事業の見直しや業界再編の文脈では候補に入りやすいカテゴリです。
戦略系の主要な大手コンサルティング会社
戦略系大手として広く知られるのが、マッキンゼー、BCG、ベインのMBB3社です。共通点は経営層直下の論点を扱う点ですが、起点と方法論、得意領域には違いがあります。比較しやすいよう、主要3社の特徴を表で整理します。
| ファーム | 創業/日本進出 | 強み領域 | 主要クライアント層 |
|---|---|---|---|
| マッキンゼー | 1926年/1971年 | 全社戦略、組織設計、デジタル | グローバル大企業、政府機関 |
| BCG | 1963年/1966年 | 事業ポートフォリオ、成長戦略 | 国内大企業、グローバル企業 |
| ベイン | 1973年/1982年 | PE案件、収益改善、PMI | PEファンド、消費財・リテール |
マッキンゼー・アンド・カンパニー
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、世界60カ国以上に拠点を構えるグローバル戦略ファームです。経営課題を構造的に分解する仮説思考と、業界横断の知見を組み合わせるアプローチを特徴とします。
クライアント層はグローバル大企業や政府機関が中心で、全社戦略、業界再編、組織設計、ESG・サステナビリティ、デジタル領域の上流テーマを多く扱います。日本オフィスは長期にわたり東京拠点を中心に、製造、金融、消費財、ヘルスケアなど主要業界をカバーするチーム編成です。マッキンゼー・デジタルやマッキンゼー・アナリティクスといった専門組織を持ち、戦略提言からデータ活用、組織能力構築まで隣接領域を取り込んでいます。提言の質と人材輩出力の高さが、ブランドを支える要素です。
ボストン コンサルティング グループ
ボストン コンサルティング グループ(BCG)は、事業ポートフォリオ分析や成長戦略の領域で長い実績を持つグローバルファームです。東京オフィスは1966年に開設され、海外戦略ファームとして早い段階で日本市場に進出した経緯を持ちます。
事業ライフサイクル分析や経験曲線などの分析フレームを生み出した出自を背景に、事業ポートフォリオ再構築、収益性改善、成長領域の探索といったテーマに強みがあります。近年はデジタル子会社のBCG X(旧BCG Digital VenturesおよびBCG GAMMAの統合体)を通じ、AI・データ分析、デジタルプロダクト開発の領域でも存在感を増しています。日本オフィスの規模は戦略系の中で最大級で、国内大企業との取引が多い点が特徴です。
ベイン・アンド・カンパニー
ベイン・アンド・カンパニーは、結果志向と顧客との緊密な協働を掲げるグローバル戦略ファームです。プライベートエクイティ(PE)ファンド向けのコンサルティングで世界的なシェアを持ち、案件デューデリジェンスやポートフォリオ企業の収益改善を多く手掛けています。
クライアントの株主価値向上にコミットするスタイルが特徴で、成果指標を共有しながらプロジェクトを進める形を取りやすいファームです。業界別では消費財、リテール、テクノロジー、金融サービスなどに強く、PE案件と並ぶ柱となっています。日本では東京オフィスを中心に、戦略策定、PMI、CX領域の支援を展開しています。MBBの中ではコンパクトな組織体制ですが、深い関与で結果に踏み込む進め方が選ばれる要因です。
総合系の主要な大手コンサルティング会社
総合系大手は、戦略から実行までの幅広い領域に対応します。代表として、アクセンチュアとBIG4系4社(デロイト、PwC、EY、KPMG)の特徴を整理します。
アクセンチュア
アクセンチュアは、戦略、業務改革、テクノロジー実装、運用までを単一ファーム内で接続する世界最大級のコンサルティング会社です。2025年時点の日本国内人員数は約2万8,000人、グローバルでは約77万4,000人規模に達しています(参照:ダイヤモンド・オンライン国内人員数調査、Accenture公式情報)。
国内DX案件における存在感は明確で、基幹システム刷新、AI活用、データ基盤構築、デジタルマーケティング、サイバーセキュリティなど領域ごとに専門組織を保有しています。Accenture Strategyを起点に、Industry XやSongなどブランド傘下の機能群を組み合わせる提供モデルが特徴です。戦略から実装までを切れ目なく接続できる点が、戦略系・IT系どちらでもなく総合系として独自の位置づけを得ている要因です。
デロイト トーマツ コンサルティング
デロイト トーマツ コンサルティングは、デロイト トーマツ グループに属する総合系大手で、BIG4の中でも国内での人員規模・売上規模が大きいファームです。グローバルでもデロイトは4社最大級の規模を保ちます。
業界別ユニット体制が整備されており、製造、金融、ヘルスケア、公共などのチームが業務改革、組織設計、コスト構造改善などを支援します。監査法人系のネットワークを活用したリスク・規制対応、内部統制、サイバーセキュリティ領域に強みがあります。グループ内の財務アドバイザリーや税務との連携でM&A、組織再編といった大型案件に対応しやすく、複数年度にわたるプログラム型の支援も多く手掛ける構造です。
PwCコンサルティング
PwCコンサルティングは、PwCグローバルネットワークの一員として戦略・経営管理領域を中心に扱う総合系ファームです。日本では戦略コンサルティング部門のStrategy&がブランドとして併存し、戦略策定からオペレーション改革、テクノロジー導入までをカバーします。
M&Aや財務系アドバイザリー部門との連携が密で、ディール戦略、PMI、財務再編プロジェクトの推進に強みがあります。製造、金融、ライフサイエンス、公共などの業界別ユニットを持ち、サイバーセキュリティ、データ分析、サステナビリティ領域でもプロジェクトを拡大しています。テクノロジー製品ベンダーとのアライアンスを軸にした実装力も、近年強化されている領域です。
EY・KPMGコンサルティング
EYストラテジー・アンド・コンサルティングとKPMGコンサルティングも、BIG4系の総合系コンサルティング会社です。デロイト、PwCに比べると国内人員規模はやや小ぶりですが、特定領域での存在感は強くなっています。
EYは戦略コンサル機能のEY-Parthenonを擁し、PE案件、グローバル案件、サステナビリティ・気候変動領域などで案件を伸ばしています。KPMGはガバナンス、リスクアドバイザリー、規制対応領域に強みを持ち、金融機関や公共セクターでの実績が厚いカテゴリです。両社とも中堅大企業の経営課題を、グループ内の監査・税務・FAS機能と組み合わせて解く構造に長けています。
日系の主要な大手コンサルティング会社
日系の大手コンサルティング会社は、外資系とは異なる組織文化と支援スタイルを備えています。シンクタンク系2社と総合系の代表例を取り上げます。
野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所は、シンクタンク機能とITソリューション機能を併せ持つ国内最大級の独立系コンサルティング会社です。2025年3月期の連結売上高は7,648億円、グループ従業員数は16,679人に達しており、金融、流通、製造、公共といった業界に厚い顧客基盤を持ちます(参照:野村総合研究所 会社概要、2025年3月31日現在)。戦略コンサルティングからシステム開発・運用までを自社で展開する点が特徴です。
特に金融機関向けの基幹システム、証券・資産運用業界向けの業務支援、官公庁向け政策研究の3領域での実績が厚く、長期にわたるパートナーシップを継続するクライアントが多く存在します。リサーチレポートや市場予測の発信力もあり、業界トレンドの起点となるレポートを定期的に公表しています。中長期で経営課題に向き合うスタイルが、外資戦略系との差として明確に現れる要素です。
三菱総合研究所
三菱総合研究所は、政策研究・社会課題系のリサーチ機能で知られる国内大手シンクタンクです。エネルギー、環境、ヘルスケア、防衛、ITといった公共性の高い領域で官公庁向けの調査・政策立案支援に厚い実績を持ちます。
近年は民間向けコンサルティング機能も拡張し、エネルギー転換、サステナビリティ、技術戦略、新規事業領域でのプロジェクトを伸ばしています。研究員と業界専門家を組み合わせる体制が独自で、長期的な社会動向と企業戦略を接続する設計に強みがあります。政策動向と経営判断を重ねて検討したいテーマで候補となる選択肢です。
アビームコンサルティング
アビームコンサルティングは、NEC傘下の日系総合系コンサルティング会社です。日本企業の業務慣行への理解を活かしつつ、戦略から業務改革、システム導入、運用まで広い領域に対応します。
SAP導入では国内有数の実績を持ち、基幹システム刷新案件における存在感が大きいファームです。アジア圏に拠点を多く持ち、日系企業の海外展開や現地法人向け案件にも対応できる点も特徴です。組織改革、財務・人事領域の業務改革、デジタルマーケティング、データ活用などをバランスよく扱う構成で、外資系総合系との競合軸として位置づけられます。
大手コンサルティング会社の選び方
大手コンサルティング会社の選定は、ブランドや知名度ではなく、自社の課題と必要なケイパビリティの組み合わせで判断するのが定石です。3つの軸から考えます。
解決したい経営課題のタイプで選ぶ
最初の軸は、解きたい経営課題のタイプです。全社戦略の方向付けや新規事業の検討といった上流テーマであれば戦略系、業務改革やシステム導入を伴うテーマであれば総合系・IT系が候補に入ります。
例えば、3〜5年の中期経営計画策定や事業ポートフォリオ再構築であれば、論点設計と経営層巻き込みに強い戦略系の起用が合います。一方、サプライチェーン改革やSAP刷新のように業務とITをまたぐテーマでは、業務側とIT側を両方押さえられる総合系が向きます。テクノロジー実装が成果の鍵を握るDX案件は、IT・デジタル系の活用が現実的な選択です。
判断の起点は「何を、誰が、どこまでやるのか」を分解することにあります。経営層の関与の深さ、現場の巻き込み範囲、技術選定の比重を整理してから候補を絞り込むと、ファームのカテゴリと提案内容のミスマッチを抑えられます。
プロジェクト規模と予算で選ぶ
次の軸は、プロジェクト規模と予算です。大手戦略系は月額単価が高く、3〜4名×3〜6カ月の構成でも数千万〜億単位の予算規模を想定しておく必要があります。総合系・IT系では人数が膨らむ代わりに月額単価は戦略系より落ち着き、半年〜数年スパンの大型プログラムを組みやすい構成です。
期間と稼働体制も重要な変数で、コアチームの人数、シニアの関与時間、現場サポートメンバーの配置を提案段階で具体化することが望ましい設計です。週次ステアリング、論点ペーパーの提出頻度、ワークショップの実施回数なども含め、稼働の重さを見積もっておくと判断がぶれません。
成果物の重さも合わせて設計します。経営会議向けの提言書中心か、業務マニュアル・要件定義書まで踏み込むかで、必要なファームと予算規模が変わってきます。
業界専門性と過去の支援領域で確認する
3つ目の軸は、業界専門性と過去の支援実績です。同業界での支援経験は、業界固有の規制、商慣習、競争構造に対する理解の深さを左右します。
確認の方法としては、提案書に記載される「類似案件の実績」だけで判断せず、提案メンバーが当該業界に何年関与してきたかを面談で確認するアプローチが現実的です。プロジェクトリーダー個人の経歴と関与時間が、成果の大半を決めます。
加えて、業界別チームの有無、当該業界の専門誌・カンファレンスでの発信実績、グローバル本社との連携体制なども確認したい情報です。提案時には、過去案件の概要、想定論点、初期仮説までを尋ね、論点設計力の高さを比較する方法が有効です。
大手コンサルティング会社を活用するポイントと注意点
ファーム選定後の起用判断と進行管理にも、押さえておきたい実務ポイントがあります。契約面、推進体制、失敗パターンの3つに整理します。
提案内容と契約条件の確認方法
契約段階では、スコープ、成果物、検収基準、追加費用の発生条件を具体に詰めることが起点となります。スコープ定義が曖昧なまま契約すると、後工程で「これはスコープ外」「追加見積もり対象」と判定され、想定外のコストや遅延を招きやすくなります。
確認すべき主な論点を一覧で整理します。
| 観点 | チェックポイント |
|---|---|
| スコープ | 対象範囲、関連プロセス、除外事項の明示 |
| 成果物 | 形式・粒度・章立て・データ提供の範囲 |
| 検収基準 | 完了条件、レビュー回数、修正範囲 |
| 体制 | アサインメンバー、シニア関与時間 |
| 追加費用 | 範囲外作業、出張費、ツール費用の扱い |
成果物の粒度と検収基準は、合意できる粒度まで言語化しておくのが安全です。シニアメンバーの稼働時間と工程ごとの関与方針を契約書に明記しておくと、進行中の人員変動にも対応しやすくなります。
社内体制とプロジェクト推進の整え方
プロジェクトの成果は、社内側のカウンターパート設計と意思決定プロセスの整備で大きく変わります。役員クラスのスポンサー、PM役の管理職、現場検討メンバーの3層を最低限の単位として置く構成が現実的です。
意思決定プロセスを最初に設計しないまま走り出すと、論点が経営層まで上がる仕組みが機能せず、提言の採否が決まらない事態が起きます。週次ステアリング、月次経営報告、現場ワークショップといった会議体を、目的と参加者を明確にしたうえで配置しておくと進行が安定します。
現場の巻き込みも要点で、提言が決まった後に現場が動けない構造になっていないかを早期に確認します。検討段階から現場メンバーをワーキンググループに組み込み、意思決定後の実行担当を可視化しておくと、提言から実行への移行がスムーズになります。
失敗パターンと回避のチェックポイント
典型的な失敗パターンは、丸投げによる成果不全、経営層と現場の温度差、提言止まりで実行が進まないケースの3つです。
丸投げ型では、社内側が論点を理解しないままアウトプットを受け取り、提言を運用に落とせない構図が生まれます。回避策として、社内メンバーが資料作成と論点整理に主体的に関与する体制を取るのが有効です。経営層と現場の温度差は、検討段階から現場が関与しないことで起きやすく、現場ワークショップを早期に組み込む設計が予防策となります。
提言止まりは最も多い失敗で、実行フェーズの体制設計と予算確保を契約時点から織り込むことで回避しやすくなります。提言までと実行までを別契約に切り替えるのか、同一ファームで通すのかの判断も、起用判断の段階で整理しておきたい論点です。
大手コンサルティング会社が活用される典型シーン
最後に、大手コンサルティング会社が活用される典型シーンを3つ取り上げます。自社の検討文脈にマッピングするための参考となります。
中期経営計画の策定と全社戦略の見直し
中期経営計画の策定や全社戦略の見直しは、大手戦略系・総合系が活用される代表シーンです。3〜5年の事業ポートフォリオ再構築、成長領域の特定、撤退・縮小判断、投資配分の方針などが論点となります。
外部環境の構造変化を踏まえた市場分析、競合動向、自社のケイパビリティ評価を組み合わせ、論点を経営層が判断できる粒度まで整理する点に価値があります。社内の既存検討では取り扱いにくい撤退判断や、複数事業部の利害が絡む再編論点を、第三者の視点で整理する場面でファームの起用が増えます。
経営層合意形成の進め方も重要な工程で、取締役会・経営会議向けの中間レビューを織り込み、結論ありきの議論にならないよう論点ペーパーを段階的に提示するのが定石です。
新規事業開発・M&A
新規事業開発やM&Aは、戦略系と総合系が並列して関与しやすいシーンです。事業機会探索、参入戦略の策定、デューデリジェンス、PMI(Post Merger Integration)と工程ごとに必要なケイパビリティが異なります。
事業機会探索では、市場規模、競争環境、技術トレンド、規制動向を組み合わせた評価フレームを使い、複数の事業仮説を比較する構造を取ります。M&Aではコマーシャル・デューデリジェンス、財務、税務、法務、人事の各領域を専門ファームで分担する構成が一般的です。
PMIフェーズでは戦略系が落としどころを設計し、総合系・IT系が業務統合とシステム統合を担う分業が機能しやすい設計です。検討の初期から実行までの工程を見越して、ファームの組み合わせを設計するアプローチがブレを防ぎます。
DX推進・基幹システム刷新
DX推進と基幹システム刷新は、近年特に大手コンサルティング会社の関与が増えているシーンです。業務プロセス改革、ITグランドデザイン策定、パッケージ選定、要件定義、移行計画策定、実装パートナーとの連携設計といった工程が連動します。
IDC Japanの調査でも、AI活用や組織改革領域のコンサルティング需要が成長を牽引しているとされ、DX関連プロジェクトが市場拡大の大きな要因です(参照:IDC Japan 国内ビジネスコンサルティング市場予測)。総合系・IT系の存在感が大きい領域で、戦略系もデジタル子会社経由で関与することが増えています。
実装パートナーとの連携設計は、コンサル起用の際に見落とされやすい論点です。コンサルが要件定義まで担当し、別ベンダーが実装に入る構成では、橋渡し役を誰が担うのかを契約段階で明確にしておくと、後工程の手戻りを抑えられます。
まとめ:自社に合う大手コンサルティング会社の選定に向けて
大手コンサルティング会社の選定は、ブランドではなく課題タイプとケイパビリティの組み合わせから判断する設計が現実的です。最後に、選定に向けたポイントを振り返ります。
分類別の特徴と強みの振り返り
分類別の特徴を改めて整理すると、戦略系は経営層直下の論点設計、総合系は戦略から実行までの広域対応、IT・デジタル系はテクノロジー実装、日系・独立系は国内業界知見と中長期パートナーシップが軸となります。MBBの戦略系3社、アクセンチュアとBIG4系の総合系、NRI・三菱総研・アビームの日系大手は、それぞれ起点となる強みが異なる点を踏まえて比較するのが要点です。
比較する際の観点は、人員規模、業界別チームの厚み、シニア関与時間、過去の類似案件、グローバル連携の必要性、単価レンジの6点に集約されます。
選定プロセスの次のステップ
選定プロセスの次のステップは、課題定義の言語化とRFPの設計です。解きたい論点、期待する成果物、期間、予算上限、提案メンバーへの要件をRFPに落とし込み、3〜5社程度に絞った比較を進めるのが効率的なアプローチです。
情報収集の優先順位としては、各社の業界別チーム実績、提案メンバーの経歴、過去類似案件の概要を中心に押さえ、提案プレゼンでは初期仮説と論点設計力を比較します。社内意思決定までの流れでは、稟議に必要な比較表、選定理由、想定リスク・対応方針を整理し、経営層が判断しやすい形に揃える設計が有効です。
押さえておきたい要点
- 大手コンサルティング会社は戦略系・総合系・IT系・日系の4カテゴリに大別され、起点となる強みが異なる
- 国内ビジネスコンサルティング市場は2024年に7,987億円となり、2029年には1兆2,832億円規模に達する見込み(出典:IDC Japan)
- 戦略系MBBは経営層直下の論点設計、総合系・IT系は戦略から実装までの広域対応に強みがある
- アクセンチュア国内2万8,000人、NRIグループ約1.7万人など、ファームごとに人員規模と提供価値が異なる
- ファーム選定は「課題タイプ×規模・予算×業界実績」の3軸で絞り込むのが現実的
- 契約段階のスコープ定義、社内推進体制の設計、提言から実行への接続が、成果を左右する実務ポイント