新規事業コンサルとは、企業の新規事業立ち上げを構想段階から実行フェーズまで横断的に支援する専門サービスです。戦略系・総合系・デザイン系・インキュベーション特化型の4タイプに大別され、年間300万〜数千万円規模の費用で、市場分析・事業計画策定・PoC設計・組織立ち上げまでを担います。本記事では主要12社のランキング、費用相場、失敗しない選び方、業界別の活用シーンまで体系的に解説します。
新規事業コンサルとは
新規事業コンサルは、外部の知見と方法論を活用して新規事業の確度を高める選択肢です。自社単独での推進と比較したうえで、適切な使い分けを整理します。
新規事業コンサルの役割と支援範囲
新規事業コンサルが担う役割は、事業機会の発見から事業計画の策定、立ち上げ実行支援までの一連のプロセスにわたります。具体的には市場調査、顧客課題の特定、収益モデル設計、PoC設計、組織立ち上げといった業務が含まれます。
支援スタイルは大きく戦略策定型と実行支援型に分かれます。戦略策定型は数か月単位で構想立案・事業計画書の作成までを担い、上流の論点整理に特化します。実行支援型は事業立ち上げから初期運用まで継続的に関与し、PoCや営業立ち上げの実務まで踏み込みます。
外部コンサルは社内人材の代替ではなく補完の位置づけで活用するのが原則です。社内には事業ドメインの知見と意思決定権限があり、外部には客観的な調査手法と事業設計の型があります。両者を組み合わせることで、新規事業の構想と立ち上げを短期間で前に進めやすくなります。
自社単独で進める場合との違い
自社単独で新規事業を推進する場合と外部コンサルを活用する場合の主な違いは、情報量・スピード・客観性の3点に整理できます。
第一に、市場調査・競合分析の質とスピードに差が出ます。コンサル各社は調査フレームワーク、業界レポート、専門家ネットワークを保有しており、社内チームが数か月かけて集める情報を数週間で構造化できます。
第二に、意思決定プロセスへの第三者視点の導入です。社内だけで議論すると既存事業のロジックに引きずられがちですが、外部の視点が入ることで事業ポートフォリオ全体での優先順位付けがしやすくなります。
第三に、社内合意形成にかかる工数の削減です。経営層への説明資料や事業計画書、投資判断資料といった意思決定文書の品質が一定水準で担保されるため、稟議プロセスでの差し戻しや再検討の回数を減らせます。一方、コストと社内ノウハウの蓄積機会という点では自社単独に分があります。
新規事業コンサル会社の4つのタイプ
新規事業コンサル会社は、支援領域とアプローチに応じて4つのタイプに分類できます。タイプごとの強みと適合フェーズを整理し、自社課題に合う選択肢を絞り込みます。
| タイプ | 主な強み | 適合フェーズ | 費用感 |
|---|---|---|---|
| ① 戦略コンサル系 | 市場分析・論点整理 | 構想・計画策定 | 高 |
| ② 総合・デジタル系 | 上流〜実装まで広く対応 | 構想〜立ち上げ | 中〜高 |
| ③ デザイン系 | UX・プロダクト設計 | 検証・プロダクト開発 | 中 |
| ④ インキュベーション特化 | 0→1の事業化推進 | 立ち上げ・収益化 | 中 |
① 戦略コンサルティングファーム
戦略コンサルティングファームは、新規事業の構想段階で市場分析と事業仮説の構築に強みを発揮するタイプです。マッキンゼー、BCG、ベインに代表される外資系の大手戦略ファームが該当します。
経営層向けの上流工程支援が中心で、新規事業のテーマ設定、市場ポテンシャル評価、参入シナリオの比較検討といった論点整理を担当します。費用は数千万円規模になるケースもあり高水準ですが、論点設計の精度と意思決定資料の質には定評があります。グローバル展開を視野に入れる大企業の構想段階で活用されることが多いタイプです。
② 総合・デジタル系コンサルティングファーム
総合・デジタル系コンサルティングファームは、戦略立案から実装、運用までを幅広くカバーするタイプです。アクセンチュア、PwCコンサルティング、デロイト、アビームコンサルティングなどが代表例として挙げられます。
DXや基幹システムを伴うデジタル新規事業との親和性が高く、テクノロジー領域の専門人材を内製化している点が特徴です。大規模プロジェクトに対応できる人員体制を備えており、数十名規模のチームを長期間投入する案件にも対応します。デジタルチャネル構築や業務プロセス再設計と組み合わせた新規事業に適合します。
③ デザインコンサルティングファーム
デザインコンサルティングファームは、顧客起点のサービスデザインに強みを持つタイプです。グッドパッチ、コンセント、IDEOなどが代表例として知られます。
ユーザーリサーチ、ペルソナ設計、ジャーニーマップ作成、プロトタイプ検証、UI/UX設計といったプロダクト寄りの業務に強みがあります。BtoC向けのサービスやSaaSプロダクトの新規立ち上げと相性がよく、初期仮説の検証フェーズから関与するケースが多くなります。デザインスプリントなど短期集中型の手法を用い、プロトタイプを介した検証サイクルを早く回せる点も特徴です。
④ インキュベーション特化型ファーム
インキュベーション特化型ファームは、事業化フェーズの推進力に特化したタイプです。Relic、ゼロワンブースター、Sun Asteriskなどが該当します。
0→1フェーズの型化されたプロセスを保有しており、事業アイデアの発掘ワークショップ、PoC設計、初期営業立ち上げ、エンジニア・デザイナーのアサインまで実務レベルで踏み込みます。中堅・大企業がスタートアップ的な事業立ち上げを行う際の推進パートナーとして活用されます。事業開発SaaSや独自の方法論を組み合わせて支援する企業も多く、立ち上げ初期の不確実性に対応しやすい点が強みです。
新規事業コンサル会社ランキング12選
ここからは新規事業コンサル会社の主要12社を、業界での位置づけ、強み、適合する顧客像の3点から整理します。順位は業界での認知度・新規事業領域での実績言及度をもとにしたものですが、自社のフェーズや課題に応じて優先順位は変わります。
① マッキンゼー・アンド・カンパニー
マッキンゼー・アンド・カンパニーは、世界最大手の戦略コンサルティングファームです。経営層向けの大規模新規事業構想を得意とし、業界横断での知見と独自リサーチをもとに事業仮説を構築します。
グローバル展開を見据える大企業や、業界構造を変えるような事業構想を抱える企業に適合します。プロジェクト費用は数千万円規模が中心で、案件期間は数か月から1年以上に及ぶこともあります。McKinsey Digitalによる実装支援機能も保有しており、戦略策定後のデジタル実装まで連続的に支援できる体制を持ちます。
② ボストン・コンサルティング・グループ
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、戦略立案とデジタル実装の両輪を備えた戦略ファームです。デジタル特化部門のBCG Xを持ち、ベンチャー型の新規事業立ち上げ支援機能を社内に組み込んでいます。
業界横断の知見を活かした新規事業設計に強く、製造業・金融・消費財など幅広い業界の上流支援に実績があります。事業構想からプロダクト開発まで連続的に進めたい大企業の新規事業に適合するタイプです。プロトタイプ開発機能を社内に持つ点も特徴です。
③ ベイン・アンド・カンパニー
ベイン・アンド・カンパニーは、事業成果へのコミットを重視するスタイルで知られる戦略ファームです。プライベートエクイティ投資家向けのコマーシャル・デューデリジェンス実績が豊富で、市場成長性と事業性を高い精度で評価する手法を保有しています。
成長戦略、投資判断、M&Aと組み合わせた新規事業支援に強みがあり、投資意思決定とセットで新規事業を構想する企業に適合します。グローバル拠点間の連携も柔軟で、海外市場参入を伴う事業構想にも対応します。
④ アクセンチュア
アクセンチュアは、戦略・デジタル・テクノロジー・運用までを幅広くカバーする世界最大級の総合コンサルティングファームです。Accenture Songなどデジタル新規事業に特化したユニットを保有し、DX起点の新規事業創出に強みを発揮します。
大規模で長期的な事業立ち上げに適合し、システム実装やオペレーション構築まで含めた数十億円規模のプロジェクトにも対応します。グローバル拠点の人員リソースを柔軟に投入できる点も特徴です。日本国内の大企業向け事業開発でも豊富な実績を持ちます。
⑤ デロイト トーマツ ベンチャーサポート
デロイト トーマツ ベンチャーサポート(DTVS)は、デロイトトーマツグループ内で大企業の新規事業創出とスタートアップ連携を専門に支援する組織です。オープンイノベーション領域での実績が豊富で、CVC設立支援やアクセラレータープログラムの運営にも対応します。
スタートアップとの協業や海外展開を視野に入れる大企業の新規事業に適合します。投資・税務・監査などデロイトグループのリソースを横断的に活用できる点も強みで、事業設立フェーズの実務サポートまで対応します。
⑥ PwCコンサルティング
PwCコンサルティングは、戦略・財務・規制対応を統合的に支援する総合コンサルティングファームです。業界特化型のインダストリーユニットを多数保有し、規制業種・金融業の新規事業に強みがあります。
会計・税務・法務領域とのグループ連携により、規制対応や財務スキームの検討を含む新規事業に適合します。金融、ヘルスケア、エネルギーなど規制環境が複雑な業界の事業開発で実績を持ちます。M&A支援機能も連携させられる点も特徴です。
⑦ ドリームインキュベータ
ドリームインキュベータは、戦略コンサルティングとベンチャー投資の二軸を持つ独立系のファームです。「社会に価値あるベンチャーを創出する」という思想のもと、業界変革を伴う新規事業の構想に強みを発揮します。
ビジネスプロデューサー型の支援スタイルが特徴で、構想立案から事業推進まで深く関与します。新興産業の創出や、業界横断の事業連携を視野に入れる企業に適合するタイプです。投資先のスタートアップとの連携機会を活用できる点も独自の強みになります。
⑧ 経営共創基盤(IGPI)
経営共創基盤(IGPI)は、ハンズオン型の実行支援で知られる独立系の経営コンサルティング・投資ファームです。中堅・大企業の事業再編、ターンアラウンド、新規事業立ち上げを併走形式で支援します。
机上の戦略策定で終わらず、現場の業務改善や組織再編まで踏み込む点が強みです。経営課題と新規事業を地続きで設計できるため、本業の構造変化と連動した事業開発を進めたい企業に適合します。常駐型の関与スタイルを取るプロジェクトも多く、現場での即時判断に対応できます。
⑨ リブ・コンサルティング
リブ・コンサルティングは、営業・マーケティング含む実行フェーズの支援に強みを持つ国内独立系のコンサルティングファームです。中堅企業や成長企業の経営支援を中心に展開しています。
新規事業のテーマ設定から立ち上げ後の収益化までを設計対象とし、営業組織立ち上げや顧客獲得施策の実行まで踏み込みます。事業立ち上げ初期からPL責任を意識した支援を求める中堅・成長企業に適合するタイプです。建設・住宅、自動車、ヘルスケアなど業界特化のチームも持ちます。
⑩ アビームコンサルティング
アビームコンサルティングは、日系発の総合コンサルティングファームとして国内大企業の事業開発に幅広い実績を持ちます。DX・基幹システム領域との組み合わせに強く、業務プロセス再設計と一体になった新規事業を得意とします。
国内大企業の事業開発、製造業のサービス化、金融機関の新サービス立ち上げといったテーマで実績があります。グローバルでも欧米系ファームとは異なる、日系企業の意思決定文化に寄り添ったスタイルが特徴になります。
⑪ 株式会社Relic
株式会社Relicは、新規事業創出に特化したインキュベーション支援企業です。事業開発支援SaaS「Throttle」などのプロダクトと、コンサルティング型の支援サービスを組み合わせて提供しています。
0→1フェーズの型化された支援に強みを持ち、事業アイデアの発掘から検証、立ち上げ、グロースまでを連続的に支援します。社内に新規事業開発機能を持たない中堅・大企業や、立ち上げ初期の人員不足を補いたい企業に適合します。エンジニア・デザイナーリソースの提供も含めた立ち上げ支援が特徴です。
⑫ 株式会社グッドパッチ
株式会社グッドパッチは、デザイン起点の新規事業立ち上げに強みを持つデザインカンパニーです。UI/UXデザインから戦略デザイン、組織デザインまで幅広く展開しています。
ユーザーリサーチ、プロトタイプ検証、プロダクト開発フェーズで価値を発揮し、BtoC向けサービスやSaaSの新規プロダクト立ち上げに適合します。ビジネスとデザインを統合した支援アプローチが特徴で、PMF探索段階の事業に強みを持ちます。
新規事業コンサルの費用相場
新規事業コンサルの費用は、ファームの規模、プロジェクトの範囲、契約形態によって大きく変動します。予算策定の参考になる相場感を整理します。
プロジェクト規模・フェーズ別の相場
新規事業コンサルの費用は、年間300万〜1,000万円程度が中堅クラスのレンジとして一般的です。3か月程度の市場調査・事業構想プロジェクトであれば500万〜1,500万円、6か月以上の事業計画策定・PoCを含むプロジェクトでは1,000万〜3,000万円規模が中心になります。
戦略系大手(マッキンゼー・BCG・ベインなど)に依頼する場合、月額で1,500万〜3,000万円程度、半年から1年規模のプロジェクトでは数千万円から1億円規模になるケースもあります。一方、事業化フェーズのインキュベーション支援は月額固定型が多く、月100万〜500万円程度の継続契約が中心です。プロジェクトのフェーズが上流に近いほど、また投入される人員のシニア比率が高いほど単価は上がります。
契約形態の違い(顧問・プロジェクト・成果報酬)
契約形態は大きく顧問型・プロジェクト型・成果報酬型の3つに分けられます。
顧問型は月額数十万〜数百万円で継続的な助言を受ける形式で、新規事業の壁打ち相手や経営層のメンタリングに使われます。プロジェクト型はスコープと期間を固定し、成果物ベースで見積もる形式が中心で、新規事業コンサル案件の主流形式と位置づけられます。
成果報酬型は売上連動の報酬体系で、新規事業の立ち上げ後の運用フェーズに限定して採用されるケースが多くなります。立ち上げ初期の構想段階では採用されにくい契約形態です。
費用に含まれる範囲と追加費用
費用に含まれる範囲は、契約書での明確化が必要です。基本フィーには通常、戦略策定、調査、レポート作成、ミーティング参加が含まれますが、外部調査会社への発注費・PoC実証費用・システム開発費は別建てになるケースが一般的です。
アウトプットの粒度(経営会議向けレポートか、現場で使えるオペレーションマニュアルか)でも総額は変わります。費用評価の際は、社内チームで同じ業務を行う場合の人件費・採用コスト・期間を試算し、外部発注のROIで比較する考え方が有効です。安さだけで選ぶと、再依頼や手戻りでかえって割高になる事例もあります。
失敗しない新規事業コンサルの選び方
新規事業コンサル選びで失敗しないためには、自社側の準備と評価軸の明確化が前提になります。以下4つの判断軸で候補を絞り込みます。
自社の課題とフェーズを明確にする
依頼前に整理しておくべきなのは、新規事業の現在地です。構想・検証・立ち上げのどのフェーズにあるかで、適合するコンサルのタイプが大きく変わります。
構想段階であれば戦略系・総合系の上流支援が向き、検証段階ではデザイン系のプロトタイプ検証が有効です。立ち上げ段階ではインキュベーション特化型や実行支援型が適しています。
加えて、解きたい問いを文書で言語化してから打診します。「市場性を見極めたい」「収益モデルを作りたい」「営業組織を立ち上げたい」など、課題を切り分けることで、社内人材で代替可能な業務と外部に依頼すべき業務の境界が見えてきます。
業界・領域の支援実績を確認する
候補となるファームの業界・領域実績は必ず確認します。新規事業コンサルでは、対象業界の業務知見、規制環境の理解、業界特有のKPI感覚が成果に直結するためです。
確認すべきは、同業界・近接領域での事業開発経験、事業モデル別(BtoB/BtoC/SaaS/プラットフォーム)の知見、過去の公開事例の3点です。提案資料を取り寄せ、事例の粒度(業界カテゴリ程度の抽象表現か、具体的な事業概要まで踏み込んでいるか)を比較すると、ファームの理解度が見えてきます。
近接領域でも構わないので、自社事業との接点が見える実績を持つ会社を優先します。
支援範囲とアウトプットの形を揃える
候補ファームの支援範囲とアウトプット形式は、社内側で求めるものと揃える必要があります。戦略策定型と実行支援型では納品物の性格がまったく異なります。
戦略策定型は事業計画書・市場分析レポート・意思決定資料が中心で、実行支援型はオペレーションマニュアル・PoC運営・営業立ち上げ施策など実務寄りのアウトプットが中心です。
戦略策定後の実装・運用支援が必要かどうかも確認ポイントです。社内に実装人材がいる場合は戦略策定型で十分ですが、実装人材が不足している場合は実行支援フェーズまでカバーできる会社を選ぶ必要があります。
担当者の経験と相性を見極める
提案担当と実働担当の違いは、コンサル選定で見落とされがちなポイントです。提案フェーズで登場するパートナーやマネージャーがプロジェクト中も主担当を務めるとは限りません。
打ち合わせの場では、実働するシニアコンサルタント・マネージャーとの直接対話を依頼し、現場の意思決定スピードや課題の捉え方を確認します。新規事業は不確実性が高く、現場での判断と修正が頻繁に必要になるため、担当者の意思決定品質が成果に直結します。
経営層・事業責任者と対話できる経験値があるか、PoC現場で即時判断できる実務感覚があるかを評価軸に据えるのが有効です。
新規事業コンサルティングの進め方
新規事業コンサルティングの進め方は、ファームによる細部の違いはあるものの、4つの共通ステップに整理できます。社内側で準備すべき内容を理解しておきます。
課題仮説とゴールの整理
最初のステップは、課題仮説とゴールの整理です。経営課題のなかで新規事業がどのような位置づけにあるかを明確化することから始めます。
具体的には、成功定義(KPI・期間・予算)の合意、対象市場・顧客の初期仮説、撤退基準の素案を整理します。社内で関連する事業部門・経営企画・財務部門と論点をすり合わせ、コンサルへのオリエンテーション資料に落とし込みます。
このステップで論点が曖昧だと、その後の調査・分析の方向性がブレやすく、追加見積もりや手戻りの原因になります。短期間でも社内合意を作っておく価値があります。
市場調査と事業機会の特定
次に、市場調査と事業機会の特定を行います。定量データによる市場サイズ把握、定性インタビューによる顧客課題の深掘り、競合分析と参入余地の評価が中心業務です。
具体的には、業界レポート、政府統計、有価証券報告書、専門家インタビュー、顧客インタビュー(N=15〜30程度)を組み合わせて市場構造を整理します。
ここで顧客課題の具体化が不十分だと、その後の事業モデル設計が空中戦になりやすくなります。顧客の業務フローや意思決定構造まで踏み込んで仮説検証を行い、事業機会を絞り込んでいきます。
事業計画策定とビジネスモデル設計
事業機会を絞り込んだら、収益モデル・コスト構造の設計に移ります。価格設計、顧客獲得チャネル、原価構造、人員計画、設備投資といった要素を組み合わせ、ビジネスモデルを文書化します。
定量面では、3〜5年のPLシミュレーションを複数シナリオで作成します。楽観・標準・悲観の3シナリオで投資回収期間と損益分岐点を可視化し、意思決定者向けの計画書としてまとめます。
この段階で経営層の意思決定を仰ぎ、本格的な投資判断を行う流れが一般的です。事業計画の精度と意思決定資料の品質が、その後の社内承認プロセスを左右します。
実行・PoC支援と内製化
意思決定を経たら、実行・PoCフェーズに移ります。小規模検証で初期仮説を検証し、市場の反応を見ながら事業モデルを修正していきます。
PoCの設計時には、検証すべき仮説と成功基準を明確化することが重要です。曖昧な目的でPoCを始めると、結果の判断ができず、撤退判断もできません。
並行して進めるべきは、社内人材への引き継ぎ設計です。コンサル契約終了後に事業を運営するのは社内チームなので、ナレッジ移管の仕組みと運用体制を契約内に組み込みます。事前に撤退基準を定めておくことも、リスク管理の観点で欠かせません。
依頼前に押さえておきたい注意点
依頼後のミスマッチや期待値ズレを防ぐため、契約前に押さえておきたい3つの観点を整理します。
期待値とKPIの合意形成
依頼前にゴール・成功条件を文書化しておく必要があります。「市場の有望性が判定できる調査結果」なのか「経営会議で承認できるレベルの事業計画書」なのか、期待するアウトプットの粒度を双方で握ります。
報告サイクル(隔週レビューか月次か)とレビュー方法(経営層レビューを含むか)も契約段階で決めておきます。曖昧な成果物指示はコンサル側の工数を膨らませ、見積もり超過や品質低下の原因になります。期待値合意の文書は、契約書に別添して残すのが実務上有効です。
内製化を前提にした関与設計
新規事業コンサルは外注して終わりではなく、契約終了後に事業を運営する社内チームの育成が前提となります。丸投げにせず社内チームを並走させる設計が必要です。
具体的には、社内側のプロジェクトオーナーと事業推進担当を1〜2名アサインし、コンサルとペアで作業する体制を組みます。ナレッジ移管の仕組み(議事録、フレームワーク資料、業務マニュアル)を契約に組み込み、終了後の運用体制をあらかじめ設計しておきます。
契約期間と成果物範囲の確認
契約期間と成果物範囲の確認は、追加費用トラブルを防ぐ重要なポイントです。スコープ外となる業務範囲を明確化し、想定外の作業発生時の費用条件(追加見積もり方式、時間単価など)を事前に合意しておきます。
また、新規事業では途中での方針変更が起こりやすいため、スコープ変更時の費用条件を契約書に明記しておくと安心です。成果物の知的財産権の帰属についても、ノウハウや調査データの取り扱いを含めて整理します。
業界別の新規事業コンサル活用シーン
業界別に新規事業コンサルの活用パターンを整理します。自社状況に近い活用イメージを参考に、依頼内容を具体化していきます。
製造業:既存技術の事業化と新規市場参入
製造業での新規事業コンサル活用は、保有技術の用途探索が代表的なテーマです。研究開発で蓄積した技術を新規市場に転用する用途開発、既存BtoB顧客向け技術のBtoC市場展開、海外市場への新規開拓といったパターンがあります。
特に技術ドリブンの企業では、技術シーズと市場ニーズのマッチングに、外部の市場調査機能とビジネスデベロップメント知見を組み合わせる活用が有効です。技術の汎用性評価、ターゲット市場の選定、ビジネスモデル設計を一連で支援するスタイルが中心となります。
SaaS・IT:新サービス立ち上げとPMF検証
SaaS・IT業界では、新サービス立ち上げとPMF(Product Market Fit)検証フェーズでの活用が多くなります。顧客課題の検証と機能設計、GTM戦略と料金設計、プロダクト改善サイクルの構築といったテーマが中心です。
特にデザイン系コンサルやインキュベーション特化型のファームが活用されやすく、ユーザーインタビュー設計、プロトタイプ検証、初期顧客獲得施策まで踏み込んだ支援が求められます。早い検証サイクルを回せる外部パートナーの存在が、PMF到達までの期間短縮に効きます。
金融・小売:DXを伴う新規事業開発
金融・小売業界では、DXを伴う新規事業開発がコンサル活用の中心テーマです。既存顧客基盤を活かした新サービス(金融機関のヘルスケア事業、小売の決済・金融サービスなど)、デジタルチャネルの設計、規制・コンプライアンス対応が代表的です。
これらの業界では、業界特化型ユニットを持つPwC、デロイト、アクセンチュアといった総合系ファームが優位に立ちやすい領域となります。規制環境への理解と既存システムとの統合知見が、事業立ち上げの確度を左右します。
まとめ|新規事業コンサル選定の要点
最後に、新規事業コンサル選定の要点を整理します。
自社課題に合うタイプを起点に絞り込む
- 新規事業コンサルとは、企業の新規事業を構想から実行支援まで横断的に支援する専門サービスです。戦略系・総合系・デザイン系・インキュベーション特化型の4タイプから、自社のフェーズに合うタイプを起点に絞り込むのが選定の基本です
- 戦略系は構想段階、総合系は構想〜実装、デザイン系は検証フェーズ、インキュベーション特化は立ち上げフェーズで強みを発揮します
- 費用感は年間数百万円から数千万円規模まで幅があるため、社内予算と事前にすり合わせておきます
比較軸を持って3社程度に提案依頼する
- 候補は3社程度に絞り、共通のRFP(提案依頼書)を用意して比較可能性を担保します
- RFPには、課題仮説、ゴール(KPI・期間・予算)、求めるアウトプット、社内体制を明記します
- 提案内容と担当者の質を並列で評価し、実働担当となるシニアコンサルタントとの対話を必ず設定します
- 契約前に期待値・スコープ・知財帰属を文書で合意し、内製化の仕組みも併せて設計しておくとミスマッチを防げます